本日は、日本で注目されている「置き配」に関する盗難問題についてお伝えします。「置き配」とは、宅配便を玄関先や指定した場所に置いてもらう配送方法のことで、新型コロナウイルスの感染拡大以降、非接触で荷物を受け取れる利便性が支持されてきました。特に、再配達を減らし効率化を図るため、宅配業界でも積極的に採用されています。しかし、ここ数年で「置き配」荷物を狙った窃盗被害が増加しており、多くの利用者や宅配ドライバーに不安が広がっています。
例えば、近畿地方に住む40代の男性は、インターネット通販でモバイルバッテリーを注文し、ガスメーターボックス内への「置き配」を指定しました。しかし、帰宅後に確認すると、荷物は消えていました。宅配業者が撮影した配達完了時の写真には荷物が映っていましたが、業者は「指定された場所に荷物を置いた時点で配達は完了」と主張し、それ以降の責任は消費者にあると対応を拒否しました。男性はやむを得ず警察に盗難届を出しましたが、被害額約8,000円は戻らず、解決には至りませんでした。
同様の被害は他にもあります。首都圏に住む30代の女性は、フリマアプリでネックレスを販売しましたが、購入者が「置き配」での受け取りを指定し、その後盗難に遭ったと連絡がありました。この結果、取引が完了せず、売上金が振り込まれない可能性が生じ、女性は困惑しました。このようなケースは、取引の信用を損なう恐れがあるため、特にフリマアプリの利用者にとって深刻な問題です。
国民生活センターの調査では、2020年以降、「置き配」に関する盗難相談が急増しています。昨年度、東京都内では368件もの相談が寄せられ、今年度は上半期だけで234件に達しています。しかし、盗難保険で補償されたケースはごくわずかで、昨年度と今年度の補償件数はそれぞれ5件にとどまっています。主要な宅配業者3社のうち、置き配盗難保険を提供しているのは日本郵便のみで、その補償内容も1事故あたり1万円程度に限定されているのが現状です。
宅配ドライバーの間でも、「置き配」への不安が広がっています。宅配ボックス大手「ナスタ」が実施した調査では、回答したドライバーの75%以上が、玄関先に荷物を置くことに不安を感じていると答えました。また、「荷物がない」というクレームを受けた経験のあるドライバーも18.3%に上るなど、現場では盗難リスクが日常的な課題となっています。
こうした状況を受け、専門家は「置き配」荷物の盗難を防ぐために、配達完了通知を受け取ったら可能な限り早めに荷物を回収することを勧めています。また、宅配業者では、日時指定サービスを導入し、荷物が安全に受け取れる仕組み作りを進めています。例えば、ヤマト運輸の「クロネコメンバーズ」や佐川急便の「スマートクラブ」では、ユーザーの在宅時間に合わせた置き配指定が可能です。
それでもなお、「置き配」が善意に支えられている仕組みであることを忘れてはなりません。多くの利用者が信頼を持ってこのサービスを利用していますが、今後も利用者が安心して使える環境を整えるためには、さらなる対策が求められます。安全性を確保しながら効率化を追求するため、業界全体での取り組みが必要とされるでしょう。
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